辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

 

 

第八話『ヨコミネ式教育法』

「僕、『鷹の目』に入るよ」

「おい!なんでそこまで知ってんだ?!」

「白陰に聞いたよ。トビのパートナーなんでしょ?」

「あいつ……」

鳶雄の目つきが変わった。海人、玲央、政孝、三人の視線が鳶雄に集まる。電話先の誠に集中するため、鳶雄は目を閉じて言葉を選ぶようにして話し出した。

「5番と8番には気を付けろ」

「え、なに?いきなり!5番と8番??」

「今わかっている範囲でそれだ。もっといる可能性もある」

「なんのこと?何がいるの?」

「おいおい、そのぐらい自分で考えろ。俺は忙しい。じゃあな」

「ト、トビ?!待って!!」

 

ツー……ツー……ツー……

 

「話の途中ごめん。バイト先の奴から急に電話が……」

「電話、途中で切っちゃってよかったのか?」

政孝は根っからの善人。相手が誰であろうと関心が半端じゃない。

「大丈夫、あいつならなんとかやるよ。信頼してんだ、面と向かっては言えないけど」

「おぉ~~!!誠が信頼する奴か~~!!会ってみたいぜ!!」

こっちは根っからの全力少年。海人には小学生のような天真爛漫さが常時備わっている。

「話を戻すと、『松下村塾』のような若者育成の私塾を、現代に合わせて再び作るということ。この理解で間違いはないか?高比良」

神色自若。その言葉が玲央にはぴったりだ。海人が燃え上がる炎だとするなら、玲央は透き通る水を連想させる。三者三様とはまさにこのことだ。この絶賛個性勃発中の三人をまとめることができるのも、今の早稲田ではただ一人、鳶雄だけに思えた。会って間もないこの短い時間に鳶雄のカリスマ性は三人の心を捕らえていた。

「ああ、間違いない!話し戻してくれてサンキュー、榮倉!みんな、個性バラバラでいいね」

「確かに個性的な奴らが集まったな!!」

「海人が言うとなんか笑えるね。誠くん……大きなビジョンはわかったよ。でも実際何から始めていくの?」

「そうだな、まずは質の良い教育をみんなで共有したいな。まず俺らが良いものを知っていてこそ、周りにも良いものを提供できる」

鳶雄は電話した時のままずっと右手に握っていたスマホを机の上に置いた。

「これ、見てくれ」

「4つのスイッチ?!気になる!!」

「続き見る?海人にとっても大事なスイッチだよ」

「衝撃だ、こんな教育方法があるなんて……、誠くん、これを僕らに見せたってことは……」

「そう!これは決して幼稚園生だけに言えることじゃない。、むしろ大学生こそ必要だと俺は思った」

4人はこの後も時が経つのを忘れて話を続けた。そしてこれを機に各自が教材を探して、持ち寄り話し合った。その中の一つに早稲田大学の教旨があった。

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1913年(大正2年)、早稲田大学創立30周年記念祝典において、総長大隈重信は早稲田大学教旨を宣言した。

 

早稲田大学は学問の独立を全うし 学問の活用を効し
模範国民を造就するを以て建学の本旨と為す

早稲田大学は学問の独立を本旨と為すを以て
之が自由討究を主とし
常に独創の研鑽に力め以て
世界の学問に裨補せん事を期す

早稲田大学は学問の活用を本旨と為すを以て
学理を学理として研究すると共に
之を実際に応用するの道を講し以て
時世の進運に資せん事を期す

早稲田大学は模範国民の造就を本旨と為すを以て
個性を尊重し 身家を発達し 国家社会を利済し
併せて広く世界に活動す可き人格を養成せん事を期す

 

鳶雄は最後の一文に出てきた『人格』という言葉に釘付けになった。これが今の若者に絶対的に足りないと直感的に悟れたからである。

(まずは自分からだな)

自分のいる位置で鳶雄は決して満足しない。この性格が、彼の最大の武器であり、周りと差を生み出していた所以であった。

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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