辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

 

~前回までのあらすじ~

「大学を辞めるよ」――高比良誠は大学に通う目的を見失っていた。そんな誠に対して、双子の兄、鳶雄が提案したのは、〈人生の入れ替え〉だった。鳶雄は誠の代わりに早稲田大学に通い、誠は鳶雄がやっていた『立会人』という仕事をすることに。鳶雄の仕事のパートナー、白陰により誠は父親が生きている事実を知らされた。

父親に会うため謎の組織『鷹の目』に潜入を試みるが、アジトに向かう車内、更なる衝撃の事実が明らかに!そのショックが引き金に誠の意識は薄れていく。そんな中、一つの幻が誠の脳裏に映し出された。

 

第十話『右脳派・左脳派診断』

「……え?!……お……落ちてくる?!!う、うわ~~」

「おい!!どうした?!」

誠の目はギョッとするほど見開いて宙を見ていた。さらに瞬間にして尋常でない汗をかいており、数秒間、心ここに在らず、という状況であった。

「太陽と月がゆっくり動き出して……」

なんとか口を動かして、誠は言葉を絞り出した。

「空から落ちてきたんだ」

「太陽と月が?!」

「映画を見てるみたいだった。はっきり見えたんだ」

白陰は非常に驚いていた。その訳は彼もまた、同じ幻を一か月前に見ていたからである。それをあえて誠には言わずに、この幻の意味が一体なんなのか白陰は考えを巡らせていた。

 

「あと10分で到着です」

車のバックミラー越しにヘングストと白陰の目があった。

「ヘングスト……おまえはどう思う?こいつが見た幻」

「さぁ、どうでしょうね。カタストロフィーの類は映画で見て得た知識しか持ち合わせておらず……現実で起こるとは到底思えませんが」

ヘングストは白陰から目を離し、再び運転に集中した。

「そうか……まぁ、普通そうだよな。この話は一旦ここで終わりだ。あと10分なら到着までに偽トンビにやってもらうことがある」

「偽トンビじゃない、誠って名前がちゃんとある!!」

「へ~、誠って言うのか。たぶん明日には忘れているけど、一応今だけ覚えておこう」

相変わらずの生意気っぷりに半分呆れながらも、誠は要件を聞いた。

「で、何をするの?」

「今から言うURLを携帯で打ち込んでくれ」

「おぉ?!今?!」

急を要するような白陰の言い方に、誠は慌ただしくiPhoneを取り出した。

 

「http://braintest.sommer-sommer.com/ja/」

「念のため、もう一つ」

「http://www.arealme.com/left-right-brain/ja/」

 

誠がURLを打ち込むと、『左脳派・右脳派診断』というサイトが出てきた。二つ目のサイトも同じ類であった。

「脳?!」

「そうだ。おまえの右脳と左脳のバランスを測るテストだ。やってみろ!」

誠は白陰に言われた通り、二つのサイトでそれぞれテストを受けた。

「結果、出たよ」

「どれ、見せてみろ」

「これ」

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「二つ目がこれ」

S__2416645

誠の測定結果に白陰は見入っていた。

「やっぱり……おまえは天才型だ」

「天才型?」

「ああ、右脳と左脳のバランスがいい」

「自分の脳のバランスを知って、一体どんな意味があるの?」

白陰は誠の目を見つめながら真剣な表情で語りだした。

「人間の脳には俺らが想像もできないほど大きな力が隠されてる。これをうまく使って生きるのか、それとも全く関心を払わず使えずに生きるのかでは、天地の差が生まれる」

「今の僕はうまく脳を使えてないの?」

「ケーパビリティはある!だけど、鍛えないと宝の持ち腐れだ」

「けぱーみんと???」

「ケーパビリティー!将来性や才能のことだ」

「へ~、難しい言葉知ってるな。で、それはどうやって鍛えたらいいの?」

知的好奇心なのか、宝の持ち腐れと言われて悔しかったのか、どちらかわからないが誠は脳を鍛えることに強く心が惹かれた。なんとしても鍛えてやる、そう意志を固めていた。その目を見て白陰も触発されたのか、

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「本気なんだな!じゃあ教える。よく聞け。まずは、『脳科学は人格を変えられるか?』っていうエレーヌ・フォックス博士が書いた本をだな……」

と意気揚々と語りだそうとした、その時……

 

バン!!!!!!!

 

大きなシャッター音と共に暗闇が訪れた。車の外ばかりでなく中の情報も暗闇が奪い去った。怒涛の勢いで誠の心に不安が入り込んできた。

「到着しました」

「中に入る前に一言ぐらい言ってほしかったな、ヘングスト!」

「申し訳ございません。話の腰を折ってはいけないと思い……」

「十分折っちゃってるから、もう手遅れっ!!」

白陰の声が響いている様子から、ここが地下だと誠は気付いた。

「到着……したの?アジトに」

ライターで火を付けて白陰は車内を照らした。

「まだだ、これから車降りて数分歩いたところにある」

誠は唾を呑み込んで言った。

「アジトにいるんだよね」

「ああ、写真で見た奴だろ、アジトにいるよ」

そう言って白陰は再び写真を誠に見せ、そのまま誠の手に渡した。

「まさか、こんな形で再会するとは思ってもみなかった」

誠の目は涙ぐんでいた。

「高比良一家、本当に面白いな。さあ、兄と弟、遠慮は無用の感動の再会だ!!」

 

 

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『脳科学は人格を変えられるか?』とは?

脳科学に関する興味深い一冊。

(内容紹介)

チャーチルは「成功とは、失敗を重ねても熱意を失わない能力のことだ」と言って
どんな逆境もはねのけ、偉大な政治家としてその名を留めた。
エジソンは電球の試作の失敗が1万個に達したとき、「失敗したのではない。
うまくいかない方法を1万通り見つけただけだ」と言って、ついにはフィラメントを発明する。

人生の成否を分けるのは、「前向きであることのできる」性格によるものなのか。
だとすると、それは脳のどんな働きによるものなのか。
欧州最大の脳科学の研究所を主宰し、その問いを解きあかそうとしている
エレーヌ・フォックス博士が、その答えに驚くべき実験と調査の数々から迫る、
とびきり面白いポピュラーサイエンス。

例えばこんな調査がある。
1930年代に修道院に入った全米各地の修道女180人が書いた自叙伝を検証し、
前向きな言葉と後ろ向きな言葉が出てくる頻度を点数化した。
約60年後に、修道女たちの寿命との相関関係をみる。すると結果は、
前向きな自叙伝を書いていた修道女が、そうでない修道女に比べて
10年以上長生きしていたのだ。

そして、フォックス博士自身の研究所は、前向きな感情を起こさせる物質、
セロトニンを脳内で生み出す特定の遺伝子を発見、
性格は遺伝子によって決まっているのかというところにまでメスをいれる。
ところが、研究を進めると、これらの遺伝子は環境によって
その働きが変わってくるという驚くべき結果がえられたのだ。
科学の推理を楽しみながら、子育てや自分の人生にまで思いをはせることもできる、
深い一冊です。

 

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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