辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

 

 

第十一話『新人の可能性~カマスの話~』

アジトの中に入ると、想定以上の清潔感、そして明るさに誠は驚いた。よく映画に出てくるようなアジトを想像していたからであろう。その場所はアジトというよりはホテルのロビーのような今めかしい家具や照明が揃っていて、全体の調和がとれていた。居心地が良い、と誠は思いながらも、緊張の帯を緩めることはしなかった。

 

「お!到着か!」

誠の正面奥から声が飛んできた。それは誠にとって懐かしい声だった。

「兄ちゃん……」

「久しぶりだな、セイ」

「……生きてたんだね」

涙ぐんで誠はうまく話せなかった。

「秘密にしていて悪かった」

「トビは……兄ちゃんが生きてること、知ってたの?」

「ああ、トビはあの事件の後、すぐに会って話をしたからね」

「どうして僕だけ……」

「話せば長くなる。親父が戻ってきたら3人でゆっくり話そう」

その言葉を聞いて、誠は安堵した。一家団欒の様子を思い浮かべると自然と誠の頬を涙が流れた。13年前の家族に戻れる、そう思うと誠の心から力がみなぎってきた。

「セイ、ここに来たってことは『鷹の目』に入るのか?」

「父さんに会いたかったから!だから来たのに……父さんがいないなんて」

「ここ数日で目まぐるしく事件が起こってな。その対応に親父は追われてる」

「何があったの?!」

「裏切りだ」

「え……誰が?」

「前団長。しかも、メンバー二人、引き抜いて出て行った」

「翔馬(とうま)さん、それ以上は……彼もまだ入団したわけではないので」

「ふふ、血がつながった兄弟というのは恐ろしいな。自然と気を許して何でも話してしまうところだった。忠告ありがとう、オカピ」

誠はその顔を見て北陸新幹線、車内での記憶がフラッシュバックした。

「あ!!」

「どうした、セイ」

「あの時の……」

「スクアラルさんの勘が当たっていましたね、驚きです!東京に戻ったら彼女にすぐ知らせてあげましょう」

「既に面識があったとは。セイは『縁』の才を持ってるな。大切に育てれば類まれな能力になりそうだ」

早稲田大学に通っていた時には見ることができない表情で誠は笑っていた。大学の単位、友達の評価、そんなものばかりを気にして、八方美人に振る舞い息苦しくなっていた過去から解き放たれた。新しい道をようやく見つけたのだ。ドルルゥン!!と音が鳴り響く程、誠の『心のギア』は熱を上げて動き始めた。

「で、兄ちゃん!これから僕は何をしたらいいの?」

「まずは、『鷹の目』の現状と、これからの方向性をオカピから聞いてくれ」

翔馬は誠からオカピに視線をずらした。

「オカピ、こいつはラビットのタイプに近い。基本的には自由に動いてもらいたい」

「承知しました。」

「カマスの話はわかるか?オカピ」

「カマス?魚のカマスですか?」

「そうだ。肉食性の魚、カマス。ある大学でカマスの実験が行われたんだ。実験用のプールにカマスを入れて、餌としてイワシを与えていたんだけどね、途中からアクリル板で仕切りを作った」

「餌を食べられなくしたんですね」

「カマスは餌を食べようとアクリル板に突進していく。だけど次第に食べれないことが分かってアクリル板にぶつからなくなる」

「なんだかかわいそうですね」

誠は二人が話しているのをじっと黙って聞いていた。

「ここからがこの話の面白いところなんだ。なんとアクリル板を取り外しても、カマスは餌を食べに来ない。悲しいことに、学習してしまったんだ、餌は食べられないと」

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「おお、なんと!学習したことが裏目に」

「さあ!ここで問題だ!!」

「?!」

「再びカマスが餌を食べるためには……どうしたらいいと思う?」

「う~~ん、難し問題ですね」

「ヒントは……」

翔馬が誠を見た。オカピも誠を見て、ハッとした。

「あ!わかった!新しくカマスを入れる!!」

「正解!!じゃあ、セイのこと、頼んだよ、オカピ!……そろそろ、次世代から新しい風が吹かないといけない頃だ」

 

 

 

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『心のギア』とは

辻が『心のギアの変え方』という本で知り好きになった言葉。

 

『心のギアの変え方』↓本の内容紹介↓

仕事で失敗したり、クライアントとうまく話せなかったり、誰で
も「自分はなんてダメなんだ」と感じることがあります。

著者の浜口直太さんは「自分をダメだと感じるその心が、ビジネスでは逆に武器
になる」「自分をダメだと思うことは、それだけ他者に対して敏感な証拠」と新
しい発想転換法を伝授します。

自身も「バカでダメ人間だった」という浜口さんが大事にしてきたものは
「素直さ」「やる気」「謙虚さ」「融通性」「愚直さ」「体力」の6つでした。

「自分はダメだ」「運が悪い」「自信が持てない」と思い悩む人たちへ、「勉強
ができなくても、能力が人より劣っていても、この6つを磨けば”ダメな自分”か
ら”最高の自分”になれる!」と熱いメッセージを贈ります。

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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