辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

 

 

第十七話『考えてみろ』

「もしもし……セイ?」

「お!トビだ!久しぶり!!」

「ホント久しぶりだな!11月の電話以来だ」

「元気にしてた?」

「もちろん!そっちは?」

「3か月みっちり学んで『鷹の目』の大枠は理解できたよ。組織のみんなとも仲良くなってきたしね」

「みんないい奴らだからな」

「君のパートナーは今そっちにいるはずだよ」

「……?!!あ、やっぱさっきの白陰か!!」

鳶雄はすぐにあたりを見回した。しかしどこにも白陰の姿は見当たらない。騒がしい新歓の場面が次々と鳶雄の目に飛び込んでくる。

「うぅ、わ~~~、頭痛くなるわ、ここにずっといると」

「そっちは新歓の時期か」

「どこのサークルも必死だ。そこまで頑張る力はどこから来てるんだろな、俺にはさっぱりだ」

一拍間をおいて、誠は哀愁漂う悲しい声で言った。

「悲しいけどそれが現実だよ、トビ」

「可笑しな状況だ」

鳶雄は回想した。誠と人生を入れ替えてからの大学生活を。そこで見た大学生の現状を。

「なぁ、セイ」

「ん?どうした?」

「おまえはどう思う?今の大学教育について?」

「ん~~、一人一人がさまよっている感じがする、羅針盤持たずに航海しちゃってるというか……」

「羅針盤……」

「以前、白陰に言われたんだ。『おまえが見ている世界が正しいのかどうか考えてみろ』って」

「『考えてみろ』、か……やっぱ考える力がないから大学にビジョンが抱けないんだろうな」

「僕はそれを大学で学べると思って早稲田に入ったんだけどね、違ったみたいだ」

「それでもセイはよかったんじゃない?一度大学から離れたことで今、客観的に大学生を見れてる」

「トビのおかげだね。ありがとう。あの夜、トビが機会をくれたから、僕の運命は変わった」

「それいうなら、俺だって!大学生やれてよかったよ。毎日発見の連続だ」

この時、鳶雄は誠の異変に気付いた。半年前と比べると明らかに落ち着いている。『鷹の目』での半年間が誠にとって充実していたことを物語っていた。しかし、それを素直に喜べない鳶雄の心が、

「セイ、あまり無理はするなよ」

という言葉となって自然と鳶雄の口から出てきていた。

「僕はそういう性格じゃないよ。むしろトビが無茶するタイプでしょ」

「ははっ、そうだな。気を付けるよ」

「トビは二年後どうするの?」

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「『二年後』……それも知ってたのか、驚いた」

「白陰から聞いた。僕は決めたよ、聞いた直後に。二年後に……」

ツーツーツー、ツーツーツー

「あれ?!セイ……」

(向こうの電波が悪くなったのか?!)

たった5分の電話だった。しかしこの5分が鳶雄の心に火をつけた。短期間における誠の爆発的な成長に鳶雄はうかうかしてられないと気を引き締めた。鳶雄はこの後、二年間で誰もが予想できなかった偉業を成し遂げることになるのだが、それが可能だったのは、まさに双子の片割れ、誠の支えあってのことであった。

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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