辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

 

 

第十八話『若い時の苦労は……』

誠の電話は突然切れてしまった。鳶雄はもっと話をしたかったのだろう、悲しそうに早稲田キャンパス内を再び歩き出した。

「おい!」

「……」

「おいっ!!」

「え……あ、あぁ!!」

そこにいたのは白陰だった。パートナーとの再会である。

「無視するなっ!!」

「お~~、ひさしぶりだ~!!変わってないな~~」

「半年ぐらいじゃ人の外見は劇的に変わらない!中身を見ろ!!」

「ははっ」

久方振りの遭遇に白陰も鳶雄も話が止まらなかった。半年間で互いにどんな出来事があったのか話し合っているうちに自然と誠の話題になった。

「あいつはおまえを超える逸材だな」

「セイが?」

「最初会った時はただの腑抜け大学生かと思ってたけど」

「見た目以上に根性があるんだよな、昔から」

「『鷹の目』に入ると言った時のあいつの目は本気だった」

「あいつはどうして『鷹の目』に入ったんだ?!」

「それは俺にもわからない」

「……?!!」

「きっかけは家族だろうな。だけど今のあいつは何か別の動機で動いている感じがする」

「今、セイは何をしようとしてるんだ?!」

「詳しいことはわからないが、起業するらしい」

「起業おぉ?!!」

「しかも仙台で。今ちょうど金沢から新幹線に乗って向かってるんじゃないか」

鳶雄の理解は追いついていなかった。なぜ誠が起業するのか。そしてなぜ仙台なのか。若い時の苦労は買ってでもせよ、と子供の時に父が言っていた言葉がふいに思い出された。

「そうか……セイに先越されたな。俺も本気出さないと。二年後、会わす顔がない」

「そうだな。ここで互いに修業期間って感じか。いったんパートナー解消だ」

「ありがとな。わざわざそれ言うために早稲田まで来てもらって」

「早稲田に来たのはほかの用事さ。残念だったな、第一目的じゃなくて。ちょうどさっきそっちの用事は済ませてきたよ」

「早稲田に?用事って?」

白陰はスクエアリュックからA4サイズの紙を取り出した。

「これを取りに来たんだ」

「なにこれ?」

「学割」

「え?なんで早稲田で取れるの?」

「いや、早稲田だから取れるんでしょ」

「そうじゃなくて!早稲田の学生しか取れないんだよ、学割って!」

「だから取れたんだって!」

「ん??……え、もしかして」

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「あれ、言ってなかったっけ?」

「えーーーーーーーーー?!!」

(ずっと中学生かと思ってた……)

鳶雄の開いた口が塞がらない。それを見ながらお構いなく白陰は学割をバックに戻して、その手で手帳を取り出して日程を確認した。

「4月21日に北海道行って、例の件すませたら、そこからそのまま中国戻って親の会社手伝おうと思ってる」

「そっか、親の会社か、しかも中国。……あ、ビャク、一つお願いしてもいいかな?」

「ん?」

「中国まで届けてほしいものがあるんだ」

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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