辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

 

 

第20話『具眼の士を千年待つ』

「セイ?!!なんで?!!」

「それは驚くよね、こんなところで再会したら」

「どうしてここにいるってわかった?」

「白陰から聞いたよ。ちょど今朝、北海道に飛び立つ前に成田空港で会ってきたんだ」

鳶雄が驚いている以上に、政孝は衝撃を受けていた。同じ顔が目の前に二つ。信じられない現実だった。

「え、え?!どういうこと?どっちが本物?!」

「政孝、今まで隠していてすまん、こいつが本物の誠だ」

「どうも、高比良誠です!で、こちらは?」

「あぁ~~、俺の頭も混乱しそうだ!!二人とも理解できるように順を追って話すからしっかり聞いてくれ」

鳶雄は語りだした。誠には政孝との出会いと、これから共に『平成の松下村塾』を作ろうとしていることを。そして政孝には誠と鳶雄が双子であり、入れ替わって鳶雄が早稲田に通っていた訳を。

鳶雄の説明が終わり、政孝は誠を見た。

「君が本物の誠くんだったなんて」

「兄弟そろってだましててごめん」

「いいよ。ただ、これから偽物の誠くんと何て呼べばいいのか……」

「偽物言うな!ちゃんと名前がある!鳶雄だ」

「鳶雄くんか……これから皆の前でもそう呼んでしまいそうで怖いよ」

政孝の顔にやっと笑顔が戻った。

「そこはうまくやってくれ。あ、でも。まてよ……この際にセイが早稲田に戻るのもありだよな」

「あ~~!そうだね!本物に戻れば全て問題なく……」

「いや!!それはできない!!」

「……?!!」

誠の声の強さに鳶雄は強い意志を感じた。それは以前の誠には持っていなかったものだった。

「僕はどうしてもやらなきゃいけないことができたんだ」

「起業……か?」

「トビがやろうとしてる松下村塾に近いものではあるけど」

「人材教育系?」

「系統はそうなるのかも。大学1,2年生にムーブメントを起こそうと思って」

「セイならきっとわかってると思うけど、それ簡単なことではないよ」

鳶雄な顔は真剣そのもの。リスクがあることだからこそ、前もって覚悟がないと進めない領域であると釘を打ちたかったのだろう。しかしその意図とは裏腹に誠の顔は笑っていた。

「もちろん、わかってる。今まで多くの企業がそれをしようとして、できていない」

「なんでそんな笑顔なんだ?」

誠の心は楽しさで満ち溢れていた。それが言葉なくても誠と政孝には伝わってきた。

「も、もしかして誠くん!!なにか秘策があるの??」

「フフ……ない!」

「え?!」

「全くないよ!!!」

「じゃあその覚悟と自信はどこから来るんだ?」

たった一人の双子の弟だからこそ、心配になる。鳶雄には誠が崖の上から飛び降りようとしているように思えた。そんな無謀なことをさせてはいけない、本能的にそう思ったのか、鳶雄は誠の起業を止めにかかろうとしていた。

「今までは自分が進む方向がわからなかったから。どっちに向かって進めばいいかわからないと何をやっても力が出ないんだ。でも今は違う」

「『鷹の目』に出会ってその方向が掴めたってことか。でも、それなら俺だって方向はわかってる。だけど、世の中そんな甘くないんだ」

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「うん。世の中甘くないよ。それもわかってる。でもね、トビ。方向がわかるってものすご~~~く大きなことだよ。僕はこればっかり今まで考えて悩んできたから、この問題が解けたことが本当に大きんだ。」

誠の目は輝いていた。これは鳶雄が知っていた以前の誠ではない。劇的に変わったのだ、この半年で。

「たとえ、これから歩む道が荊の道でもセイは進んでいく覚悟があるのか?」

「絶対に荊の道が待ってるだろうね。もしかしたら僕がこれからやることが認められるのは10年、100年先かもしれない」

「1000年先かもしれないぞ」

「お!トビも知ってるの?伊藤若冲!!」

「『具眼の士を千年待つ』だろ。若冲が残した名言だ」

「だったら話が早い!僕も全く同じ思いだ」

その時、三人は富士山頂上に到着した。時刻は登り始めてから5時間後の4時56分。同時に雲の層を突き破って朝日が現れた瞬間であった。

 

 

 

 

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伊藤若冲とは

1716-1800 江戸時代中期-後期の画家。
正徳(しょうとく)6年2月8日生まれ。はじめ狩野(かのう)派をまなぶ。宋(そう),元(げん),明(みん)の中国画や尾形光琳(こうりん)の画風を研究し,写実性を基調に装飾性をくわえた独自の境地をひらく。花鳥画,とくに鶏(にわとり)図を得意とした。寛政12年9月10日死去。85歳。京都出身。

 

 

 

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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