辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

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【はじめに】

こんにちは。辻です。今日からGAKUENでネット小説を連載することになりました。読者の皆さんと年齢はさほど変わりません。最近、大学を卒業した新米社会人です。

大学生活、失敗の連続でした(笑)成功したな~って思えたのは最後だけ。でも最後まであきらめなかったから大学ラスト一年は人生で一番幸せでした!失敗の数だけ話せることも増えたTHE反面教師ですw

 大学生は「考え方」で松竹梅、分かれてしまうといっても過言ではありません。様々な大学生を見てきて感じたこと、また私自身が体験したこと、この小説に可能な限りドカ盛でいこうと思います。どうか、最後までお付き合いください。

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第一章《計画×始動》

 

第一話『ラグナベルデ103の会談』

10月下旬の夜は想像以上に肌寒い。新宿区高田馬場の住宅街に緑とピンクの派手なアパートが佇む。アパートの名前はLagunaVerde。海外の高級マンションのような名前だ。アパート内に103とだけ書かれた表札の部屋がある。103の中は照明のせいか白い壁が灰色がかっている。ビュンビュン風が吹き荒れる中、その音に負けないボリュームで話し声が103から聞こえてくる。

「は?!!もっかい言って!!」

「大学を辞めるよ。」

誠(せい)の低い声は力なく、地に落ちてしまいそうなほど弱々しい。ギーと長椅子が軋む音がその場を更に重くさせる。

「誠の言っている意味がわからない・・・」

鳶雄(とびお)は納得がいかない表情で、落ち着きなく丸テーブルの端を人差し指と中指でタンッタンッタンッと叩いている。

「二年生になった時からずっと考えてきたことなんだ。ようやく今日、心が固まったよ。」

「大学の何が不満なんだよ!!」

数秒間の間があり、誠は鳶雄ではなく右上のあたりをボーと見ながら語りだした。

「高校生の時はさ、大学に入ることが目的だったんだよ。」

鳶雄は誠の話を両腕を組みながら黙って聞いている。

「だけどさ、入ってみたら、何したらいいか大学側は何も言わないんだ!」

「何も言わない?それ、最高じゃん!」

「初めはね、僕もそう思ったよ。だけど、それが何ヶ月も続いてみなよ。」

「夏休みみたいだな。」

鳶雄の言葉に耳を傾けず誠は話を続ける。

「迷子になるんだよ。」

鳶雄は誠の目を見つめていると、その奥に潜む暗闇に思わず引きずり込まれていきそうだった。

「誰が迷子?!」

「僕が大学で迷子さ。どっちに進めばいいのか、誰も何も言ってくれない。自分は何処に向かっているのかわからなくなるのさ。地図も羅針盤も大学は与えてくれない!」

「あのなー、だからって大学辞めたからって、そこから抜け出せるのか?!」

「わからない。」

無計画な誠の考えに鳶雄は段々苛立ってきた。

「わからないなら簡単に辞めるな!大学辞めた後、どうするのか考えてないんだろ?!」

「辞めた時に何かきっと見えてくる。今とは違った人生を生きてみたいんだ!!」

あきれた、あきれた、鳶雄は誠の考えのなさに茫然自失になる。しかし・・・

(今とは違った人生・・・・)

その言葉だけが妙に鳶雄の脳の片隅に残った。瞬間、頭の中で考えがグルグル回り出す。数学の超難問の答えを導き出すかのように、脳の回路が動き出す。次第に鳶雄の表情が真剣になっていく。次の瞬間、何かが鳶雄の頭にふってきた。

「あ・・・・すごいこと思いついちゃった・・・」

鳶雄の端正な顔にスポットライトが当ったかのように表情がパッと明るくなる。

「どうした?」

誠もその表情の変化に気付いたようだ。鳶雄が何かを思いついた。それが何なのか、誠の期待度が高まる。

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「俺たち、双子だろ。」

「ああ、今更・・・どうした?」

「今、おまえは大学の生活に満足できていない。」

「そうだ。」

「そして今、何かを変えなければ未来は変わらないと思ってる。」

「そうだな、きっと今動き出さないと四年間はあっという間に過ぎ去るだろうな。」

「過去も未来も変えられないけど、今は変えられる。」

誠は鳶雄が何をいいたいのかわからない。ただ、得体の知れない何かを企んでいることだけは、その表情から見て取れる。息を飲んで、鳶雄の次の言葉を待っていると、驚嘆に値する言葉が鳶雄の口から飛び出してきた。

「俺たち、今日から・・・いや、今から・・・」

ドクン・・・・ドクン・・・・誠の心臓が騒ぎ出す。

「人生、入れ替えだ。」

「へ・・・??!」

「人生を入れ替えて生きていこう!誠は俺の仕事をやる!俺は誠の代わりに大学に通う!」

「入れ替え??!!」

「後悔したくないんだろ?過去は変えられないよ。そして今、この瞬間も変わらないなら未来も変わらない。今が最高の機会なんだよ!もう、後悔したくないんだろ?」

鳶雄の出した案は全く理解できない。ただ、後悔したくないんだろ、その言葉はぐいと誠の心を掴んで離さなかった。この時、なぜか子供の頃に父に連れられて行った長野県木島平村での農業体験が唐突に思い出された。

「現在、種を蒔かない人は、未来に穀物を得ることはできない。」

収穫の秋目指して、今は汗流しながら苦労して種蒔いてるんだべ、と農夫のおじさんが誇らしげに語っていた回想シーンが脳裏に映し出された。

(今が種蒔きを始める時なのか?)

誠の意識が現実に戻る。体は自然と丸テーブルに両肘を付けて、乗り出していた。ノッテきたな、と鳶雄が笑みを浮かべる。鳶雄の後ろには明治時代に作られた北出時計製造所の掛け時計が数字の12と1の間を指している。夜は更けるが会談は止まらない。鳶雄についた心の灯火は今ようやく誠の心に点火した。薄紙をはぐように二人の計画が動き出す。

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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