辻 明日真/ コラム, 小説, 連載/ 0 comments

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《ホーランドロップとトンビ》

辻 明日真

 

 

第六話『偽トンビ』

二人の男が部屋から出ていくと、誠の心はスっと楽になった。

(はぁ~~~、疲れた!!なんだったんだあの二人の話は……)

誠はつい今しがた起こった出来事を回想していた。二人の正体が全くわからない状況で立会人を務めた誠の疲労は甚だ尋常ではなかった。そして、一息つく間もなく彼のもとに新しい来訪者が。

ガチャ……キィー

誠は驚いて扉を見る。そこには一人の男の子が立っていた。ダボっとした赤いパーカーに紺色のジーンズ。そして金髪。まるでハリウッド映画に出てくる子役のようだ。

「お疲れぇ~!!ん?あれ……トンビ……」

男の子は誠に近づいてくる。

「あれ?違う。外見だけ見たら騙されるぞ。お前、誰だ?!」

意表を突かれて誠の脳が一瞬動きを止めた。

「あ、あ、え~と」

次の言葉が出てこない。誠の慌てる顔を見て、男の子は笑いながら言った。

「まさか『鷹の目』はついにクローン人間が造れるのようになったのか?!」

(『鷹の目』??)

「あれ~、なんだか全くわかってなさそうな顔」

「君は何者なんだ?」

「トンビは俺のことも話してなかったのか。おまえ、それでよく仕事任されたな!」

兄弟の関係を悪く言われたようで誠はカッとなった。

「心外だな、少なくても君よりは僕のほうが……」

「いや、俺だ!三年間、昼夜を置かず共にしたパートナーだ!俺があいつを一番知っている」

「パートナー?!!」

「そうだ、『鷹の目』では二人一組で行動するのが掟」

「さっきから君が話してる『鷹の目』って一体なんだ」

心のどこかで首を突っ込んではいけないことだと誠は思いながらも、いやな好奇心が彼を突き動かした。

「本当に何も知らないんだな。不思議だ。そこまで何も聞かされていないのに、よくこの仕事を引き受けたな」

「『鷹の目』ってなんだ?!教えてほしい」

「やだね」

(な、なんて生意気なやつなんだ)

「これ見ろ」

男の子は一枚のハガキを誠に渡した。宛名宛先は書いてない。裏を見ると一つの絵が描いてあった。

 

mutihatumi

 

「この絵は……」

「それやるよ!それ見て一週間考えてみろ。おまえが見ている世界が本当に正しいのかどうか」

「この世界が……偽物だって言うのか?」

「まあ、絵の通りだな。存在するんだよ、おまえに見えていない世界が」

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さっきまで、ただ小憎らしい生意気な男の子が、誠の目に急に大人びて見えた。もし、僕が見ている世界の裏に何かがあるなら、と誠は人生で初めて現実を疑った。グッと背伸びすれば何かが見えてくるようだった。しかし絵の左側の人のように高さが足りない。誠には確かに見えていない世界があった。

(あぁ、今の僕には見えてこないや。この子は僕よりだいぶ年下だ。だけど見えてる)

知っている者と知らない者、その差が人生を大きく左右する。知ることがいかに大きな事なのか、自分が、無知であることを誠はこの時、悟った。

「ど~すんだ?!考えてくるのか?こないのか?」

「一週間、本気で考えてくるよ」

「そうでなくっちゃ!!楽しみにしてるぜ、偽トンビ!!」

「偽?!!」

「うん!偽物だからね。悔しかったら彼を超えてみなよ」

「君、規格外な生意気さだね。名前は?」

「典(てん)白陰(びゃくいん)!!」

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辻 明日真

辻 明日真

田舎に泊まろう!をコンセプトに自転車旅で10代はひたすらバガボンド。大学での豊富な失敗体験を生かして学生アドバイザーを行う傍らブログや小説に熱を入れる。アウトドアに見せかけて実は囲碁、お茶、コタツを三種の神器としているかなりのインドアマインドの持ち主。

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